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月の旅人

月の旅人

古い歴史の町ヴュルツブルク

古い歴史の町ヴュルツブルク




フランクフルトの空港を出ると、大型観光バスが私たちの到着を待っていた。長かった夜が明け朝の気配で空が白み始めていたが、気温が上昇するのはまだ先のため息が白い。
建物の中にいるときにも思っていたが、外観も真っ白で綺麗な空港だ。バスが出発した時に、添乗員さんが旧館の横に建てられた新館であると教えてくれた。帰りもこちら側を利用するらしい。
空港のすぐ前を走っている高速道路(アウトバーン)に乗り、一路古い歴史を持つ待ちヴェルツブルクへ。
すぐに朝陽が地平から顔を出し、左手にオレンジ色に光る球体を望みながら進んだ。が、しばらくしてそれが見えなくなってしまう。霧のような濃い朝靄に覆われた
ためだ。それでも凄まじい勢いでバスを追い越してゆく車は後を絶たなかった。
めっ…ちゃ速いな。いったい何kmで走ってるんやろ。
そんな疑問を抱いていたら、それも添乗員さんが解決してくれた。なんとアウトバーンには制限速度が設定されておらず、追い越し車線の車は時速200km越えで走っているのもざらであるらしい。ただし、時速130kmをオーバーしていて事故にあった場合などは保険がおりないとか。
でもそれをどうやって確認するのだろう。ブレーキ痕や速度メーターなどからわかるのだろうか。
一般自動車はそのようにして規制らしい規制はないようだが、観光バスなど乗客を乗せている車両は時速100km以内と定められているようだった。倍も速度が違えば、なるほど一瞬で追い抜いて行かれるわけだ。
アウトバーンは一方向3車線になっていて、一番左が追い越し車線である。私たちのバスはほぼ始終真ん中の車線を走っていた。ドライバーさんは薄い青のシャツに紺色のスーツが似合う、西洋人独特の白い肌と淡い金色の髪のまだ若い人で、私たちが居眠りしている間もただ黙々と安全運転をして快適に目的地まで運んでくれた。
ちなみに、ヨーロッパ一発達しているといわれているアウトバーンは、まったくの無料である。ドイツの端から端まで走っても料金は一切発生しないのだ。なんて羨ましい。
それも要因の1つなのか、キャンピング・カーをたくさん見かけた。国内旅行もとても気軽に行けるのだろう。まず交通費の心配をする必要がないだけでも、大いに助かるだろうから。
日本もそうすれば国内旅行者が増えて経済が潤う、なんてことはないだろうか。…ないかなぁ……。( ̄- ̄;)うーん


レジデンツまだ朝靄が晴れぬ9時前にヴュルツブルクに到着。8世紀の半ばという早くから司教座が置かれ、交通の要衝として発展したヴュルツブルクは、主要な観光場所は徒歩で巡ることができるほどの小さな町でもあった。
バスから降り立った場所は、『レジデンツ(城)』前のレジデンツ広場である。まだかなり冷え込んでいる。朝靄で陽光も届きにくく、レジデンツは幽玄の存在であるかのように白く煙った姿で私たちを迎えた。
ヴュルツブルク内を案内してくれる日本人のガイドさんがいてくれて、まずはレジデンツから観光した。ホーフ教会
最初にレジデンツの向かって右端に付属しているホーフ教会を見学。天才建築家といわれたバルタザール・ノイマンの設計である。楕円形を基礎にした複雑な構造で、バロックの至宝ともいえる教会らしい。楕円形が多用されているだけにやわらかな印象を受ける美しい教会だった。祭壇画や天井画などは、レジデンツ内も手がけているティエポロの作である。

ホーフ教会を出て、その隣のホーフ庭園へ。手入れの行き届いた庭はイギリス庭園風らしい。広く取られた通路の両側に連なる花壇や三角すいに刈り込まれた木が可愛い庭だった。


そしていよいよ、かのナポレオンも3度訪れたことがあるというレジデンツ内へ。かつて馬車が乗り入れていたという広いエントランスの向こうに段差の低い絨毯の敷かれた大階段があり、踊り場に突き当たると折り返しの階段が左右に別れていた。裾の長いドレスを着た貴婦人でも上り下りしやすいようにとの配慮らしい。
その大階段を上る前に、エントランスに直接繋がっている庭園に面した“ガルテンザール”という明るい部屋を見学した。天井はヨハン・ツィンクのフレスコ画で飾られているが、彼の絵は配色や構図が気に入らないと司教に嫌われ、この1部屋しか描かせてもらえなかったらしい。f(^^;) 確かに、素人目に見ても暗い印象を受けるフレスコ画だった……。が、それを補って余りあるシンメトリーの美しい庭園が窓の向こうに広がり、やわらかな朝陽が射し込む素敵な部屋でもあった。
そんな評価に困るガルテンザールを後にし、大階段を上る。この階段は踊り場までにも中程に平らになっている部分があり、王などの賓客の時にはいちばん下まで下りて出迎え、それほどでもないお客の時は中程の平らになっている部分で出迎え、大したお客でない時にはエントランスから一番奥になる踊り場で出迎えたらしい。
お客を出迎える場面からして身分の違いが強調されていたのかと、少々驚いた。
さてこの大階段。階段だけでも壮麗なのに、天井を飾るフレスコ画にもかなり圧倒される。ティエポロという画家が世界の4大陸への賛歌を込めて描いたそうで、人から伝え聞いた話を元にゾウやラクダなどの動物の絵も想像で描いたとは思えないほど立派に描かれていた。じっくり見るには首が痛くなるほど広い天井に、ティエポロの地球が存在した。
ちなみにレジデンツの設計もバルタザール・ノイマンで、ドーム状に弧を描いている天井を持つ大階段は周囲の疑問の声をよそに絶対の自信で作り上げられた傑作で、火災や爆撃にも強いことが第2次大戦時に証明されたそうだ。

2階に上がると、“ヴァイサーザール(白の間)”と名づけられた部屋があった。部屋の両側にカラフルな大階段と“カイザーザール(皇帝の間)”があるため、意識して壁や彫刻も白で統一した部屋にされたらしい。それでも、天使や植物の繊細な彫刻と天井から下がった豪華なシャンデリアで充分に華やかな部屋となっていた。
次の間のカイザーザールはレジデンツで最も豪華な部屋らしく、ドーム型の天井にはだまし絵や彫刻を利用した立体感のあるフレスコ画が広がっていた。ティエポロと彫刻家が話し合いながら完成させたものらしい。
だまし絵なのか彫刻なのかと探るのがけっこう楽しめる部屋だった。
さらに奥に進み、幾つ目かの部屋でガイドさんが扉を開けた途端に「おおぉぉぉ!!」と人々の口から感嘆の声が洩れた。それまでどの部屋の扉も開け放たれたままだったのにその扉が閉ざされていたのは、より人々に驚きと感動を与える趣向の1つだったのだろうか。
そこは“鏡の間”だった。ただの鏡張りの部屋ではない。バロック様式の黄金の装飾も華々しく、ステンドグラスやパズルのように分かれた鏡には細かい絵が描かれていた。あまりの綺羅綺羅しさに眩暈がしそうなほど華美な部屋だった。しかし当時の鏡の間は戦災で完全に破壊され、現在の鏡の間は18世紀の技術をそのまま使って復元したものだそうだ。
それにしても凄かった。レジデンツ内はどこも写真撮影禁止なのが非常に残念である。この鏡の間で、周囲にあまりにそぐわないおもしろグッズがあったから撮りたかったんだけど。←「そっちかいっ」とは言わないで(笑)
で、そのグッズとはどこからどう見ても中国の陶器人形。真っ白な円い顔に糸目、おちょぼ口に宮廷風のチャイナ服、そして三つ編み。部屋の真ん中の鏡の両端に、愛嬌のある姿で立っていた。
ああ、記念撮影したかった……。(笑)


レジデンツを出た頃にはすっかり朝靄も晴れ、陽射しも暖かな青空が広がっていた。レジデンツの正面に当たる道路を下り、ヴェルツブルクの中心に4本の塔がそびえるドーム(ザンクト・キリアン聖堂)へ。この道を行くとドームの後陣がすぐに見えてくる右側の八角形の塔の下から内部に入ると、そこは純白と金と桜色で統一された荘厳で華麗な聖堂だった。ドーム内部だがこのドームも戦災で破壊され、修復されたことが身廊の左右を見れば顕著にわかる。破壊を免れた一方は彫刻の施された美しい天井になっているが、もう片側は何の装飾もない殺風景な天井のままなのだ。
まったく……戦争なんてどんな面から見てもロクなもんじゃない。(-_-+)
身廊に立ち並ぶ柱には歴代の領主司教の墓碑があり、これらは戦災を免れたようで、抜群の腕を誇ったという彫刻家リーメンシュナイダーによって刻まれたルドルフ・フォン・シュレーレンベルクという善政を敷いた領主司教の墓碑もあった。まるで生前の姿をそのまま塗り固めたかのように写実的で、装束も今にもさらりと動き出しそうなほどだった。

ドームの横に建つノイミュンスター教会は外からバロック様式のファサード(正面)を鑑賞しただけで通り過ぎ、マリア礼拝堂のあるマルクト広場へ移動。礼拝堂というとこじんまりした建物を想像するが、このマリア礼拝堂はゴシック様式の大きな教会だった。これもじっくり見ることができず、マルクト広場から外観を東側と南側から眺めただけである。
その南側の入口両側には、リーメンシュナイダーによるアダムとイブの有名な彫刻があったらしいが、それも傍で見ることができなかった。ま、ここにあるのはレプリカで、本物は博物館に納められているそうだが。眺めることすらできなかった西のファサードの入口の上には、最後の審判の浮き彫りがあるらしい。ひと目でいいから見たかった……。


時間に追われるかのようにさらに進み、旧マイン橋へ。この橋はプラハのカレル橋、ローマのサンタンジェロ橋と並んで、橋の欄干を飾る彫像で名高いらしい。12人の聖人像が立ち並んでいるのだ。
が、そんな話を聞いちゃいなかった私たちは、橋よりも彫像よりもそこからの景色に歓声を上げていた。(;ーー)ヾ もっとしっかり橋を入れたアングルで、山頂のマリエンベルク要塞をバックに写真を撮ればよかったと、今になって後悔……。...(;__)/| はぁ…


個室内部ステンドグラスそんな、ちょっと洒落ているだけだと大いに勘違いしていた旧マイン橋を戻ってすぐの旧市庁舎でランチタイム。建物は13世紀のもので、入り組んだ舎内はタイムスリップしたかのようにどこもが絵になる内装だった。その奥の1室を借り、おいしいロールキャベツをいただいた。ドイツの料理は期待していなかっただけに、そのおいしさにビックリ。ステンドグラスまでもある綺麗で落ち着いた。部屋が気分まで盛り上げてくれて、最高のランチタイムを過ごすことができた料理もさることながら注文した葡萄ジュースもとっても美味ですっかりハマり、このあと葡萄ジュースがあると聞けば必ず飲むことに。ワインの産地と聞いて、それなら葡萄ジュースもおいしいかもしれないと安易に考えて妹と2人で注文したのだが、そのおいしさが想像以上だったのだ。ワインの産地なのにワインを頼まないあたり、捻くれた姉妹である。(笑)
とにもかくにも、ドイツのビールを試すはずが初日から予定変更し、結局私の「ドイツで飲めないビールを克服するぞ」計画はあえなく崩れ去ったのだった。f(^^;)


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